腫瘍は犬にとっても怖い病気
腫瘍には良性のものと悪性のものがある
悪性腫瘍がいわゆる「がん」で、ほうっておくとどんどん大きくなったり、ほかのところに転移したりします。
腫瘍は全身どこにでもできますが、そのうち3分の1は体の表面からしこりにふれることができます。
体の外からでも見つけやすい腫瘍は、乳腺腫瘍(乳がん)、皮膚腫瘍、リンパ腫の3種類です。日頃からこまめにふれて調べ、早くに発見できるよう心がけます。
1.皮膚腫瘍
背中、足の付け根にできやすい。ブラッシングの際に指でさわってみて、しこりがないかチェックします。切除手術が可能なものは切除します。
2.乳腺腫瘍
乳汁を分泌する乳腺に腫瘍ができるため、乳房が腫れてきます。メスではもっとも多く見られる腫瘍です。4~5対ある乳腺のうち、とくに腫瘍ができやすい部分が下腹部にある2対です。手術で腫瘍を切除します。
3.リンパ腫
あごの下、前足の付け根、骨盤の境あたりに多くできます。血液のがんの一種で、リンパ節という部分がはれてきます。左右両方にふれて、はれ具合を比べることが重要です。手術よりも、抗がん剤を使った理学療法がよく効くようです。
フィラリア
フィラリア症は死に至ることもある恐ろしい病気
「イヌ糸状虫」という10~30cmの細長い寄生虫のことです。心臓のなかや肺動脈に寄生し、心臓の働きを損ないます。数が多くなると次第に腎臓や肝臓の働きにも影響を及ぼし、命にかかわることもあります。
フィラリアに感染した犬の血液を蚊が吸うと、血液中のフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)もいっしょに吸い込まれます。
ミクロフィラリアが蚊の体内で子虫に成長し、子虫を持った蚊がほかの犬の血液を吸ったとき、その傷口から蚊のなかの子虫が犬の血液中に侵入します。
子虫は犬の体内を移動しながら成長し、1~ヵ月で心臓にたどり着き、寄生します。
フィラリア症にかかったら
フィラリアの数が少ないうちは、ほとんど症状はありません。しかし、心臓のなかにフィラリアが充満するようになると、血液の流れが悪くなってせきが出たり、運動時に息切れするようになります。
食餌をとっているのに体重が減ってやせたり、被毛が荒れてきたりと、見た目にも変化が表れます。散歩をするのが好きだった犬が歩くのさえ嫌がるようになることもあります。
予防薬を飲み前に血液検査を忘れず
蚊が発生する時期にあわせてフィラリアの予防薬を使うことで、感染はほぼ完全に防ぐことができます。
蚊が飛び始める時期は地域によって異なるので、薬を使い始める時期は家の近くの動物病院で相談します。
予防薬は、すでにフィラリアに感染している犬に飲ませると、危険な状態(ショック状態)を招くこともあります。薬を使う前に、フィラリアに感染していないか血液検査で確認しておきます。
犬の心の病
不安定な心が不可解な行動へと駆り立てる
ふだんはよい子なのに、留守中にひとりでいると不安でたまらなくなって問題行動を起こす犬が増えています。このような状態を分離不安症といいます。
分離不安症は、自立せずに飼い主に依存している犬に起こりやすい問題です。ただし、犬がこうした状態になるのは、飼い主との間にきちんとした信頼関係が築かれていないため。
溺愛することと、パートナーシップを築くことは同じではありません。分離不安症は、ふだんの犬とのつきあい方の問題を反映しています。
分離不安症のサイン
1.足をなめる
前足の同じところをずっとなめ続けます。ひどいときはなめすぎて毛が抜けることもあります。
2.ものを壊す
いたずらだと思われがちですが、留守中に限って、というときは不安を紛らわすための行動です。
3.吠える
留守中吠え続けたり、外出の準備をしているだけで吠え出す犬もいます。
愛犬の依存を信頼に変える
分離不安症を治すためには、犬との関係を見直すとともに、外出が特別なことではないと犬に悟らせることが大切です。
また、外出中にテレビやラジオを小さな音でつけておく、おもちゃを与えるなど、さびしさを紛らわす工夫も効果があります。
分離不安症の治療は時間がかかりますし、ひとりではむずかしいこともあります。獣医師に相談し、指導してもらいます。
留守番をさせるときは、お気に入りのおもちゃを与えます。テレビをつけておくなど、犬がさびしくならない工夫をします。
着替える、戸締まりをするなど、外出の準備をするだけで吠え出すときには、外出の準備をしてそのまま家のなかで過ごします。
犬が外出の準備をしても気にしなくなるまで続けます。