落ち着きのある犬に育てるには
冷静な犬に育つための道はひとつではない
犬のしつけ方や育て方を書いた本が、たくさん出ています。経験豊かな動物学者や訓練士によって書かれた本を読めば、犬を育てていくうえでの確かな知識が手に入ります。
ただし、本に書いてあるのは一般的なしつけ方です。それがすべての犬に当てはまるわけではありません。
犬それぞれに特有の性格があり、それにあったしつけ方をしていくことが大切です。
性格を見分けてあげる
犬の幸せにつながる
たとえば、どこに行っても落ち着いていられる犬に育てたいと思ったら、「すわれ」「まて」などのしつけを徹底することが必要です。
そのとき、傷つきやすい犬には繊細なしつけが必要ですし、調子にのりやすい犬には厳格な命令が必要です。
しつけに絶対はありません。犬の性格を見極めて、柔軟に対処することが、お互いにとっての幸せにつながります。
雄には攻撃性や支配性、なわばり意識が強い犬が多く、冷静な犬に育てても、ちょっとした刺激で落ち着きを失ってしまうことがよくあります。どちらかといえば、雄よりも雌のほうが落ち着きがあり、冷静といえるでしょう。
呼んでも無視する
反抗ではなく、なにも聞こえないほど夢中
反抗ではなく、無邪気な子ども心です。子犬のころは呼んだら飛んで帰ってきたのに、最近無視するようになってきたと怒る飼い主がいます。
それは、成犬になる前の成長過程のなかで、好奇心や独立心が強くなっている時期かもしれません。
また、犬はいくつになっても子どもの心をもち続ける、遊びの天才です。楽しいことに熱中しているタイミングだと、大好きな飼い主の声であっても耳に入りません。
夢中でなにも聞こえていない
公園やドッグランのような広いところで、蝶を発見して夢中で追いかけたり、無心で穴を掘って遊んでいるとき、犬はまわりが見えていません。
遊び足りなくて、帰りたくない
もうひとつ考えられる理由は。飼い主の呼ぶ声に気づき、我に返って戻ってみたら、そのときは飼い主が怒っていて、リードにつながれ、その日の散歩が終了になるという経験をくりかえしている場合です。
「呼ばれたから戻ったのに怒られた」「戻ると散歩が終わりになる」と解釈をして、戻ることを嫌がるようになったのです。
こうした事態を防ぐためには、呼び戻してすぐにリードにつなぐのではなく、戻ってきたことをよくほめてから、次の行動にうつるようにしましょう。
いちばんの働き者は盲導犬?
1歳から訓練を受けている
犬のなかでもっとも大変な仕事をしているのは盲導犬ではないでしょうか。
盲導犬や麻薬探知犬、介助犬などが人間のために働く犬たちです。
ラブラトール・レトリバーなどの大型犬が、成犬になる1歳ころから訓練を受けて、仕事を身につけます。嗅覚のするどさや力強さ、かしこさをいかして、任務をこなします。
盲導犬は、目の不自由な人の助けとなる犬です。主人の安全をつねに守らなければいけません。専門の訓練士によるしつけ、目の不自由な人との共同作業などを通して、仕事をを完全に覚えななければ、盲導犬にはれません。
訓練を受けた犬のうち、盲導犬になれるの約3〜4割程度だといわれています。大変な仕事ですが、盲導犬と主人は強いきずなで結ばれているので一生懸命働くのです。
気の長さは犬によって違う?
DNAを調べればわかる
人間や動物のDNA(遺伝子)を調べる研究が、世界中でさかんに行われています。DNAのしくみがわかると、個々の生物がうまれもつ性質が、少しわかるといわれています。
日本の学者の研究にも、犬のDNAを調べて性格をさぐろうとするものがあります。あるDNA型の犬はのん気になりやすい、別のDNA型では短気になりやすい、どいった具合に、遺伝による性格の違いを、科学の力で解き明かそうとする研究です。
この研究が進むと、性格の傾向がわかるようになるかも知れません。犬の性格のすべてを把握できるわけではありませんが、それそれの傾向にあったしつけ方はできます。
のん気な子にはのんびりと、無理のない育て方ができるのです。研究はまだはじまったばかりですが、研究が.進めば、飼い主さんと愛犬が、よりよい関係を築くことができそうです。
本能を刺激するスポーツ
好きなスポーツは違う
鳥やネズミなどの狩りを仕事としていた猟犬種は、家庭犬として飼っていても、走ったり、ものを追いかけたりするのが大好きです。
狩猟本能をもっているため、運動するで.とに喜びを感じます。定期的にスポーツを体験させて、本能を満たしてあげましょう。
ラブラドール.レトリーバーやプードルなどは、人間が撃ち落とした獲物を持ち帰るのが仕事です。家庭ではボールやフライング・ディスクをとりに行かせるスポーツがベストでしょう。
ダックスフンドやテリアは、アナグマやネズミなど小さな動物を、巣穴まで追いかけ回していた犬種。障害物競走やトンネルくぐりなどをさせると、嬉々として走って行きます。
珍しいところでは、水難救助犬のニューファンドランドが、水泳を得意としています。なかなか機会はないかもしれませんが、ブールで泳げれば、いちばんのストレス解消になるでしょう。
泣いたり笑ったり見えるわけ
泣いているように見える
悲しくて泣いてるわけではありません。犬は、悲しくて泣いたり、うれし涙をこぼすこともありません。涙が出るのは、目の乾燥を防ぎ、ゴミやホコリなどの異物を洗い流すための生理現象です。
ただ、いつもより涙の量が多すぎたり、涙の色がにごったり、目やにがいつもと違うときは、目の病気の可能性があります。
流涙症といって、なんらかの原因で涙がたくさん出ることがあります。また、鼻へ抜ける管が炎症を起こしてつまったり、生まれつきせまかったりして、涙があふれることもあります。
そうした症状によって目の下の毛か涙やけして、赤茶色に変色してしまう犬も少なくありません。
たくさん出たら要注意
黄色い目やにが出るのは問題
涙やけを起こしている犬は、いつも目がウルウルしているので、悲しんでいると思う人がいます。
擬人化して心配するのではなく、病気などの原因をつきとめ、よけいな雑菌が繁殖しないように、こまめに脱脂綿でふきとるなど、ケアをしてあげることが大切です。
涙や目やにの原因は、ジステンパーや伝染性肝炎などの全身性の病気の場合もありますから、異変に気づいたら獣医さんに相談します。
涙が多く出る目の病気には、角膜炎や結膜炎のほか、まぶたが内側に巻きこまれる内反症、外側にめくれ上がる外反症、いわゆる逆さまつげがあります。
そのほかにも、全身性に炎症がおきる病気の症状のひとつとして、涙などが多くなることもあります。
しかられてシュンとなるのは、反省?
リーダーに対する服従のポーズ
愛犬は、飼い主から怒られそうになると、床すれすれに姿勢を低くして、しっぽを下げて振り、じりじりと飼い主に近寄ってくる態度をすることがよくあります。
これは、オオカミが群れのリーダーに許しをこう行動と同じです。低い姿勢から、そのままごろんと寝転がり、上側になった後ろ足を上げ、おなかを見せることもあります。
ときには、その姿勢でおしっこをすることもあります。これは「あなたに逆らうつもりなんて、まったくありません」という絶対服従のポーズです。
そういうときに「おしっこをするなんて!」としかるのは厳禁です。これ以上の服従心を表すボディランゲージはないのですから、犬心を理解してあげましょう。
残念ながら謝罪や後悔はない
犬の本当の気持ち
愛犬が低姿勢でいると、「あとで悪いと思って謝るなら、はじめからイタズラなんかしなければいいのに」と思いたくなるかもしれません。
しかし、じつは犬には謝る気持ちや、後悔の念、良心の呵責はありません。犬は飼い主の態度を見て「もうじき怒られるぞ」と察したり、それまでの経験から、しかられそうな状況だと思い出して、服従の姿勢をとります。
そのとき、罪の意識は感じていません。そのため、イタズラが悪いことだと教えないと、同じ過ちをくりかえします。
ヒステリックにしかりつけるのはよくありませんが、「謝ればなんでも許されるんだ」と覚えないようにしなければなりません。
してはいけないことは、現行犯のときにきちんと教えます。あんまり強くしかられると落ちこんでしまいます。
ニコニコして笑っているように見える
笑顔に見えますが、犬の真意はわかりません
笑顔を見せることはたしかだけど、犬はハッピーなとき、うれしいときにも笑いません。人間には笑っている顔に見えるだけです。
後ろに引いた口は、うれしいときのサインではなく、服従のサインと考えられています。でも、人間の真似をして、笑う表情をする犬もいるそうです。
犬は学習能力が高いので、人間がほめてくれる顔を学んだのでしょう。驚くべき能力といえます。
楽しくて笑うのかどうかわからない
唇を後ろに引いて、口を少し開いた表情は、微笑んでいるように見えますが、これは「遊ぼうよ」というときのサインです。
楽しくて笑うわけではないでしょうが、ワクワクしているときには、こうした表情をします。
姿勢やしっぽで判断します
飼い主からしてみれば笑っている顔に見えても、犬と人間の感情表現は別物です。顔だけを見ないで、全身を見て判断しましよう。
遊びに誘うとき、犬はおじぎをするようなポーズになります。腰の高さはそのままに、背中を弓なりにして、ふせをします。
おしりとしっぽも振って、前足を持ち上げたりして、遊びたい気持ちを表現します。
うれションって、本当にうれしい?
うれしいのは本当ですが、興奮のしすぎです
飼い主に会えると、喜びが爆発します。犬は、家族が会社や学校に行っている間、ずっと我慢して、寝て待っています。
そこへ飼い主が帰ってきたら、うれしくて仕方がありません。ワンワンほえたり、ぴょんぴょん跳びはねて、飼い主の顔をなめようとします。
飼い主が帰ってきた喜びを抑えきれないのです。とくに体力がありあまっている子犬や若い犬は、激しく歓待してくれます。
興奮のあまり、子犬が母犬に甘えるように、おしっこをしてしまう犬もいます。犬にしてみれば喜びのポディランゲージなのです。
やっと帰宅したのに玄関でおしっこをされてしまう飼い主は、犬をしかりつけてしまうケースもあるでしょう。
興奮を静めてあげたほうがいい
しかし、うれションしてしまった犬を怒ってはいけません。これは服従の行動なのです。
これ以上の服従を示す行動はないのに、それを拒否されたら、犬はどうしてよいかわからなくなります。
対処法として、出迎えをするときの興奮を抑えるようにします。帰宅時に犬が跳びついてきても、一緒になって騒がず、冷静に応えます。
「ただいま」と声をかけたり、ほめたりしてはいけません。犬と目をあわさないようにして、淡々と部屋に入っていきます。
興奮しすぎのときには「まて」!
静かに対処しても跳びついてくるようなら、「まて」「すわれ」と命令をしたり、ひざを前に出してジャンプさせないようにします。
飼い主が遊ぶ気がないとわかれば、犬は拍子抜けして、5分もたてば興奮がおさまります。それをくりかえせば、帰宅時に大はしゃぎすることはなくなります。