短くてよじれたしっぽ
日本の猫に多い
江戸中期に猫股伝説などの影響があって、短いしっぽが喜ばれました。江戸中期以降に勢力を拡大し、街中で多く見かける雑種の野猫には、しっぽが短くよれているものが多く見られます。
ひとくちに雑種と呼ばれていますが、彼らは立派な日本猫という猫種です。キジトラ、三毛、サバ……さまざまな模様があり、おなじみの猫たちです。
日本では、昔からしっぽが短い猫が多かったわけではありません。平安時代の「灘紬」や「信蔀灘」といった絵巻物には、猫のしっぽは長く描かれています。
絵画のなかにしっぽが短い猫が登場したのは、江戸時代中期を過ぎてからのことです。しっぽの短い猫は、突然変異で生まれたのだと思われます。
また当時人々の間では、「しっぽの長い猫は妖しい力を持っている」といった猫股伝説などの迷信がありました。そこでしっぽの短い猫が好んで飼われるようになったというわけです。
ジャパニーズ・ボブテイルはアメリカ原産
ヨーロッパでは珍しい
しっぽが短い猫も、アジアでは普通に見られます。日本だけの現象ではないのですね。東洋の猫には、もともとしっぽの短い猫が生まれやすい遺伝子が組み込まれているということかもしれません。
外国産の猫で、尻尾が短くよじれているのは、ジャパニーズ・ボブテイルですが、これは、アメリカ人が日本猫を持ち帰って改良したもの出そうです。
日本人から見ればしっぽが短い猫は別に珍しくありませんが、欧米人にとっては非常に珍しいものだったようです。
ただ、日本でも最近はしっぽの短い猫は減少傾向にあります。日本猫と外国の猫との交雑が進み、純粋原産国の日本猫が減っているからです。
招き猫が福を招く
門前で手招きした猫が招いたもの
招き猫は昔から、金運や人(客)の運を招く置物として、主に商売をやっている人から愛されてきました。
招き猫がなぜ福を招くとされたのか、そごうとくじの由来にはいくつかの説があり、もっとも有名なのが豪徳寺説です。
江戸時代のはじめ、東京世田谷にある豪徳寺は、小さなお寺でした。あるとき和尚さんは愛猫に、「たまには育ててやっている恩に報いなさい」といいました。
しばらくして、ある武上が豪他寺を訪ねてきました。武士は猫が門前で手招きをするので、寺に入ることにしました。
休ませてもらうぞというと、和尚さんが脱法をしていると、外はにわかに雲行きが怪しくなり雷雨になりました。
武士は帰りがけに「猫のおかげで雨をしのぐことでき、おまけに説法も聞くことができた」と礼をいったということです。
実はこの武士は、彦根藩主の井伊直孝で、その後、井伊家から豪徳寺に多額の寄進があり、豪徳寺は立派なお寺に生まれかわることができました。
猫は気圧の変化に敏感な動物で、猫が顔を洗うと雨が降るといわれるように、気圧の変化を感じるとひげをこす流のです。
猫が手招きをした直後に雨が降りはじめたのは、きっとそのためでしょう。それが、猫が手招きをしているように見えたのではないかと言われています。