猫をしっかりと観察しよう
頭をすり寄せるのは飼い主への甘えの表現
猫の感情を理解するには、鳴き声のほか、耳や尻尾の動きなど、全身のボディランゲージをよく観察することです。
慣れてくれば、猫の鳴き声で喜びや怒りなどがわかるようになります。自分の頭や体をすり寄せてくるのは、甘えと同時に、顔の一部にある臭腺から出る臭いをつけて、飼い主に自分の存在を強くアピールしているのです。
尻尾や耳の動きは特におもしろい
猫の尻尾の動きを観察していると、飽きがきません。尻尾は上下左右に長い筋肉が発達していて、猫の気持ちがそのまま尻尾の動きに表れるからです。
例えば、甘えて人にすり寄ってくるとき、尻尾はピンと立っています。また叱られたときや、おびえているときは、尻尾を足のあいだに入れてしまいます。
猫の耳はふつうピンと立っていますが、恐怖や怒りにさらされると、後ろに倒した形になります。
猫のひげはレーダーの役目を果たしますが、それだけではありません。満足しているとき、警戒しているときなどのさまざまな感情を、ひげの状態から読み取ることもできます。
喉をゴロゴロ鳴らすのは気分がよいとき
猫の鳴き声は、実に変化に富んでいます。最もふつうにきかれるのは「ニャーニャー」という鳴き声ですが、これにも、餌の催促や飼い主の関心をひこうとするなど、微妙な違いがあります。
気分がよいときや飼い主に甘えているときは、喉をゴロゴロ鳴らします。反対に、怒ったときや緊張しているときは、「フー」とか「シュー」といったうなり声を発します。また、発情期には、人間の赤ちゃんに似た甲高い声で鳴きます。
毛づくろいが大好きな猫
セルフグルーミングで落ち着く
きれい好きな猫は、いつも自分で毛づくろいをします。猫の舌には細かい突起がたくさんあって、この突起をくし代わりにして、体についた汚れや抜け毛をじょうずに除去します。
このように、猫が自分の舌で毛づくろいすることを、セルフグルーミングといいます。セルフグルーミングは生後1か月ごろから始めます。
きれい好きな猫は、外から帰ってきたときや食事のあと、排尿・排便のあとなどは特に念入りに行います。
さらに、猫は唄覚が非常に発達しているので、体にいろいろな臭いがつくのを嫌がります。人間に抱かれたあと、必ずセルフグルーミングをする猫もいるくらいです。
セルフグルーミングを行う順序は、だいたい決まっていて、前足の内側から始め、顔、耳、肩、首のまわり、腹、後ろ足の順に行います。
セルフグルーミングでストレス解消
セルフグルーミングは、被毛の健康以外にもいろいろな意味があります。例えば、ストレスがたまったときや、飼い主に叱られたとき、けんかに負けたとき、獲物を取り逃がしたときなどにも行います。セルフグルーミングには、気分を落ち着かせる効果もあるようです。
セルフグルーミングがトラブルを起こすこともあります。外出先で体に毒物をつけた場合、その毒物をきれいになめ取ろうとして、中毒になることがあります。
けがをしても、おちおち薬を塗ることもできません。ストレスがたまると、猫は体の一部をなめるのが癖になり、その部分の毛が抜けてしまいます。最近は、この心因性脱毛症とよばれる皮膚病が増えているといわれています。
なでられていたら突然爪を立てる
さわられる強さや長さでウットリがイライラにかわる
快と不快は同じ場所で感じているのです。ネコが赤ちゃんのとき、母ネコは子ネコの体をさかんになめます。
これはとても気持ちがよさそうです。人からなでられるときも、ネコはこどもの頃に母ネコからグルーミングされたのと’同じ気持ちよさを感じるようです。
ネコの毛は、根元の部分が感覚神維細胞とつながっています。毛をなめられたりなでられると、この感覚神維細胞がほどよく刺激を受けてウットリするのです。
特にネコが好きなのは、首筋やあごの下、おしりやおなかをなでてもらうことです。こうした部分は、ネコにとっては急所でもあるのです。
だから警戒心の強いネコだと、飼い主などごく限られた人をのぞいて、なかなかさわらせてくれません。
でも急所は感覚が敏感な部分であるだけに、信頼できる人からさわられるとすごく気持ちがいいものなのです。
しかしなで方が強かったり、しつこかったりすると気持ちいいは不快にかわります。ウットリしていたネコが、急に人に噛みついたり、爪を立てたりするのはこのときです。
ネコは、なでられることを苦痛に感じると、イライラしたようにしっぽを振っりたり、瞳孔が大きくなったりします。
飼い主としては、このサインに早く気づくことが大切です。
飼い主に対して腹を立てた後、ネコは、今度は自分で自分の体をなめることがよくあります。
これはなめることで乱れた毛並みを整えつつ、興奮した気持ちを静めようとしている行動で、転位行動とよばれます。
新聞を広げると必ず上に乗って邪魔をする
不安な気持ちからのぞきにきます
机の上に本や新聞を広げて読んでいるときに、どこからともなくネコがやってきて、どっかりと上に座ることがあります。
しかも読書に熱中してにしてほしいときに限って、邪魔をしにきます。飼い主は、なんだよ、という気分でネコを見つめることになります。
実はこのとき、ネコの側も飼い主に対して、なんだよ、という気分を抱いているのです。
ネコからすれば読書をしている飼い主の姿は、ある一点をじっと見つめているかのようにうつるのです。
いったい何があるのか、と思って飼い主の近くに寄ってみるのですが、何もありません。どんな名作の小説も、ネコにはただの紙の束です。
ネコとしては、そんなわけのわからないものに集中するなんて、気に食わない。もっと自分を見てほしい、と本や新聞の上に乗るわけです。
同じような対象になるのはパソコンです。画面に集中している飼い主も気に食わないのです。
かまわれすぎるのはイヤだけど、無視されるのもイヤというネコの性格がよくあらわれています。
難しいのは、このときの対処法です。下手にネコをどかせようとすると、怒って噛みついてきたりします。
無事どかせることに成功しても、しつこくまた乗ってきたり飼い主としてはしばらくネコと遊んでやるか、邪魔されないように新聞や本を手に持って読むしかありません。
指を出すと自分から鼻をつけてくる
A.突起を見つけるとネコ同士のあいさつを思い出すから
ネコ同士はまずにおいで相手を識別します。特に深い理由はないのだけど、ネコの顔の前に指を突き出してみたことがある人は、結構多いと思います。
そんなこと、やったことがないという人は、今から試してみてください。どうなるでしょう。きっと、ネコが指をかぎはじめるはずです。
これは別にあなたの指が、特別に臭いからではありません。ネコには、敵意のないほかのネコと出会ったときに、お互いに鼻を近づけてぐんぐんとかぎあう習性があります。
体がくっつかないように首と顔をできるだけ伸ばし、鼻だけを近づけます。ただし鼻を近づけることはあっても、すりあわせることはありません。
そして相手のネコのにおいを確認することで、強いヤツか弱いヤツか、友達になれそうかどうかをチェックしているのです。
小さな突起物を見ると、ネコは鼻を近づけてほかのネコとあいさつすることを思い出します。
だから人が指を突き出すと、あいさつしなければと、ほとんど本能的に体を動かしてしまうわけです。
突き出すと鼻を近づけてくるのは、指だけではありません。飼い主がネコに顔を近づければ、ネコのほうも飼い主に顔を近づけてきます。
もしかして、キミは私とキスがしたいのとうれしくなる瞬間ですが、ネコはあなたと鼻であいさつがしたいのです。
また、見慣れないものを見つけたときも同様、突起のあるところに鼻を寄せ、においを確認しようとします。
ネコのあいさつは鼻が終わると、首からわき腹へと移動します。最後は肛門をかごうとしますが、お互いになかなかかがせようとはしません。
でも結局は劣位のネコのほうがしっぽを上げて、においをかぐことを許すのです。これで友好関係が成立するわけです。
何度も頭をこすりつけてくる理由
大好きだから自分のものだと主張
おでこの両端、あごの下、しっぽの付け根などには臭腺があります。飼い主にとって何といってもうれしいのは、ネコのすりすり行動でしょう。
仕事で夜遅くなって帰宅したときなど、ネコは待っていましたとばかりに玄関まで出迎えに来て、自分の顔や体を飼い主の体にこすりつけてきます。
飼い主は、甘えん坊だなあ、なんて言いながら大喜びになります。そしてみるみる元気になってしまいます。
しかしネコは、単に飼い主に甘えたいだけで、すりすりしてくるわけではありません。意図的に体を浮かせたり、くねらせたりしながら、特定の部分をこすりつけようとしてきます。
ネコには、おでこや口の両端、あごの下、しっぽの付け根などににおいを分泌する臭腺があります。
ネコは自分にとって身近なもの、愛情を感じているものに対して、この臭腺から分泌される物質をこすりつけることで、においをつけたから自分のもの、と主張しているわけです。
自分と同化させることでより安心
飼い主は気がつきませんが、ネコにすりすりされている飼い主の体は、そのネコのにおいでいっぱいです。
ネコは飼い主の体についている自分のにおいをかいで確認することで自分のにおいがすると安心します。
ネコは家のなかにある家具などにもにおいをつけます。周囲が自分のにおいで満たされているほど、ネコはリラックスできるのです。
あらぬ方向を凝視
優れた聴覚で飼い主が聞き取れない音を聞いています。ネズミの声を聞き取れる高音対応型の耳です。
ネコはときどき天井や壁を凝視します。でも飼い主の目には、天井や壁の様子はいつもとかわりありません。
ネコが壁や天井を見つめるのは、その向こうから、人間には聞き取れない音が聞こえてくるためです。
もしかしたら隣の部屋のご夫婦が言い争いをしている声かもしれないし、天井裏を走るネズミの音かもしれません。
音を聞き取る能力は、500ヘルツぐらいの低い周波数であれば、人もイヌもネコもそれほど差がありません。
しかし高い周波数になると、人やイヌはネコに太刀打ちできません。人が聞こえる音の上限が2万ヘルツ、イヌの上限が3万8000ヘルツなのに対して、なんとネコは6万ヘルツの音まで聞き取れるのです。
また、20メートル以上離れているネズミの声までわかるといいます。ネコの地獄耳ぶりがうかがえます。
飼い主の帰宅を察知
微妙な音の差もわかります。またネコは音をキャッチすると、耳をぴくぴくと左右に動かします。
そうやって音がどこから出ているのか、音源をぴたりと探りあてるのです。ネコの耳は、商性能のレーダー機能を備えているといえるでしょう。
また、習慣によって、それが何の音かも記憶することができます。飼い主の帰宅などを察知できるネコがいるのもこのためです。
自分にとってうれしい音がすれば、音の方向を凝視して、じっと聞き入るのです。